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YGD越後薬草蒸留所

蒸留所 新潟県上越市 2022.8

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YGD/越後薬草蒸留所
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YGD越後薬草蒸留所

竣工
2022.8
種別
新築
用途
蒸留所
規模
248.32㎡
構造
RC造+S造+木造
所在
新潟県上越市
設計
嶋田貴之建築設計事務所
共同設計
EA
構造設計
田中哲也建築構造計画
施工
吉原組
撮影
© toreal 藤井浩司
Link
https://echigoyakuso.co.jp/

新潟県上越市のクラフトジン蒸留所の新築計画。
クライアント企業である株式会社越後薬草は長年地域に根ざし、野草酵素の研究、発酵食品の製造を手掛けてきた。本プロジェクトは野草・薬草の発酵過程で生まれる薫り高いアルコールを活用したクラフトジン製造のための蒸留所を新築する計画である。土から生まれた80種以上の野草・薬草が発行していく過程、そこで生まれる 香り、音、空気。本社工場の視察はそこにしか有り得ない生命のエネルギーと美しさを感じさせた。「美術館のような蒸留所を設計してほしい」というクライアントの要望は、その背景を踏まえるとごく自然に受け取ることが出来た。つまり本プロジェクトはTHE HERBALIST YASO GINというサイト・スペシフィック・アートの展示を行う場所にふさわしい美術館を設計することであった。

敷地は本社工場に隣接する駐車場用地でありアスファルトに覆われていた。しかし敷地を訪れた際、水路と緑地によって囲われ取り残された場所はユートピアのようにも思えた。これは本社工場建設後に上越アーバンビレッジ整備事業によって敷地周辺が豊かな緑地を持つ住宅地として開発された事による恩恵とギャップであり、敷地はこの地の歴史と風景を融合する為の最後のピースとして静かにこの時を待っていたかのようだった。

アスファルトを剥がし大地と空を繋ぐ。そこに土による段丘状のランドスケープを計画しジュニパーベリーを主とする植物を植えていく。段丘に植物と同じ様に蒸留器を配置しグランドレベルを蒸留所として規定していく。

建築は大地から繋がるグランドレベルの蒸留所と2階のギャラリーをRC造とし、3階を屋上庭園にかかる屋根の様にS造のルーフトップとする混構造の構成となっている。グランドレベルの段丘に対し建物四隅の最小限に抑えた設置点と大地に柔らかく覆いをかけたようなアーチは重厚なコンクリート躯体に浮力を湛え、土から立ち籠める熱気で膨らんだかのような表情を見せる。軽やかに大地に架けられた建築は大地と酒造りとの有機的関係性を阻害すること無く連続させている。2階のギャラリーは壁面に飾られた薬草を用いたアートワーク(制作:汐田瀬里菜氏)と吹抜けから金管楽器のような蒸留器を見渡せる空間として設えた。3階のラボスペースに上がると360度のパノラマビューが広がり周囲の山々の眺望と空との結びつきがジンによって上越と世界をつなぐ展望を表現している。

素材もまた地域に根ざしている。RCの内外壁の型枠には浮造りにした地域の杉材を用い、出目地によって強調された表情はまるで雨垂れのような詩的な表情を見せる。隣接する機械室棟は同様の木材を使用した木造建屋であり、蒸留所とネガポジの関係を築いている。3階の8.5mのロングカウンターは地域の山、川、海で採集した石を用いたテラゾー仕上げとし、箇所ごとに産地を分けた石の表情は枯山水のようにカウンターを地域の自然に見立てている。3階のラボの天井には波のような揺らぎを手加工したステンレス板を張上げ、上下階の土と空を写し込むことで空間を統合しながらジンの水面に漂う様な感覚を生み出す。

土から生まれた薬草が発酵しアルコールが生まれ蒸留によってよりピュアに生まれ変わっていく。ジンの生まれる過程そのものが空間として翻訳され、自らもその体験に没入していく。
大地と繋がるグランドレベルと山並みと空に開かれた上階を行き来する中で常に意識が近くと遠くを横断し、全身で地球との結び付きを強く感じられる。そんな蒸留所を目指した。